箕輪山について
所在地:福島県
山系:奥羽山脈
標高:1,728m
選定:日本百名山・花の百名山・うつくしま百名山
福島県中央部に位置する安達太良山は毎年たくさんの人が訪れる人気の山。その最高峰である箕輪山は標高1,728mで、安達太良山頂の1,700m地点からは3㎞ほど北に位置しています。気軽に登ることができる安達太良山からは距離があり、安達太良山頂周辺と比べると登山者は多くないですが、豊かな緑や抜群の展望など確かな魅力を持っており、静かな山の中で自然に囲まれながら落ち着いた登山を楽しむことができる山です。
箕輪山の見どころ
岩がむき出しの安達太良山頂周辺部とは対照的に、安達太良山北側の箕輪山や鬼面山は豊かな自然が魅力の山々です。登山口の斜面に広がるブナ林を抜けた先には広大なササ草原が広がっています。鬼面山北面ではナナカマドやダケカンバが目立ち始め、林を抜けて山の上まで登ると険しい岩場にツツジ類の低灌木が疎らに生え、一気に視界が開けてきます。頂上からは箕輪山だけでなく、磐梯山や吾妻山といった近隣の百名山を見ることができます。
箕輪山は山肌を広範囲にササに覆われており、その中にツツジやナナカマドをはじめとした赤く紅葉する木が生えています。秋になるとササ原およびキタゴヨウなどの常緑針葉樹林の緑色を背景に木々が山全体を赤く染め上げます。
野地温泉口ルートについて
北から箕輪山に登るコースは大別して野地温泉口と横向温泉口の二つあります。そしてそれぞれに二つずつ微妙に位置の違う登山口があるので自分がどこから入山するのかしっかり確認しておきましょう。今回は鬼面山を通って箕輪山に登る野地温泉口のコースを選択しました。登山者の多い安達太良山の東側と比べると道が険しい部分が多く、特に鬼面山から箕輪山に至る斜面は道がえぐれて非常に滑りやすくなっているので注意してください。
鬼面山・箕輪山・鉄山 / 白雀さんの鬼面山(福島県耶麻郡猪苗代町)・鉄山(福島県)・箕輪山の活動データ | YAMAP / ヤマップ
野地温泉から鬼面山を目指す
朝の野地温泉です。登山者はこちらの野地温泉ホテルのフロントで登山者名簿に名前を書けば駐車場を使わせてもらえます。
ホテルの左手に登山口があります。入り口からすでに黄葉していますね。山の上ではどんな景色が見られるのか期待が高まります。
登山口すぐの登り坂は「ブナッ子路」。その名の通りブナ林が広がっています。ブナ林を抜けると目の前に鉄塔が現れました。左を見れば送電線の向こうに福島市街地が見えます。
背の高いササ林を抜けて新野地温泉の分岐にきました。
鬼面山方面はササがみっちり生えており、林というよりは草原といった感じです。右奥に箕輪山も見えますね。太陽が眩しくて紅葉の様子はまだ分かりません。
鬼面山を登っていくと道の左側が切り立った崖になります。ここで左側を見るとスタート地点の野地温泉を見下ろせます。登山開始から1時間足らずでこれほど見事な紅葉を見ることができるとは思いませんでした。しかし登山はまだまだこれから、箕輪山への期待が膨らんでいくばかりです。
鬼面山の西面を登っていきます。林を抜けて岩場を進み、頂上に着きました。
鬼面山の頂上から見た箕輪山です。期待以上に山全体に紅葉が広がっていました。朝なので太陽の角度が浅く影が長く出て、箕輪山の入り組んだ形がよくわかります。
どこを切り取っても絵になる見事な山です。
箕輪山を越えて沼ノ平へ
鬼面山の南面を降りて箕輪山の北面に取りつきます。写真から分かるように登山道はぎっしり生えたササ林の中を通っていきます。
箕輪山の登りなのですが、あまりにも道が滑りやすく身の危険を感じたので足元の写真しか残っていませんでした。
坂道を登り終えたら5分ほど岩と土の混じった道を進んでいき箕輪山の頂上に着きました。
このササ薮の中に三角点があるらしいのですが、見つけられる自信がないので探すのはやめておきます。
箕輪山から北を見ると鉄山避難小屋がうっすら見えます。沼ノ平を一目見るべくあそこまで歩きます。安達太良らしい荒涼とした道をしばらくすすみます。
あっという間に鉄山避難小屋に到着しました。沼ノ平の内側には紅葉する木がほとんど無いので季節が変わっても景色はあまり変わりません。お馴染みの景色がいつでも待っているというのも良いものです。
くろがね小屋の辺りも紅葉しています。安達太良山名物のくろがね小屋ですが現在は工事中です。建替え工事は2025年度完成予定でしたが少し遅れているみたいです。再開したら泊まりにいきたいですが、しばらくは予約で一杯になりそうですね。
ちょっと沼ノ平周辺をウロウロしたので帰ります。箕輪山の南面はササが多めで秋でも緑っぽいです。
箕輪山の紅葉
紅葉を眺めつつ箕輪山を登り返して頂上に帰ってきました。頂上からは磐梯山や吾妻山が見えます。この辺りに百名山3座がぎっしり詰まっているのがよく分かる景色です。
115号線の西鴉川トンネルです。山の中にポツンと建つ人工物は絵になります。
鬼面山です。いかつい名前とは裏腹におにぎり形の可愛い形をした山という雰囲気なのですが、55万年前に安達太良連峰の中で最も早く出現した山だそうです。沼ノ平が影も形もない頃から安達太良山を見守っていたと思うとなんだか感慨深いです。
鬼面山の南面に取りついた辺りで箕輪山の方を振り返ると、見事な紅葉が広がっていました。太陽が上がってきたので空気が澄んで紅葉の色も綺麗に出てきました。箕輪山の紅葉は赤というよりは橙色です。こちらもまた綺麗というよりはポップで愛嬌のある景色に見えます。鮮やかで明るい紅葉の上に軽やかな印象のすじ雲が浮かび、秋らしいカラッと澄んだ空気感を感じさせてくれます。
何度も何度も振り返って写真を撮りながらようやく鬼面山の頂上に着きました。
しばらく進むと再び野地温泉の辺りが見えてきました。陽の当たり方が変わって朝より渋みを感じる景色になった気がします。
鬼面山を駆け降りてササ林に入っていきます。あっという間に野地温泉と横向温泉の分岐に着きました。
ブナ林をゆっくり下りてクールダウンします。木の根が多くて滑りやすいので最後まで気を抜かず下りていきました。
マウント磐梯で日帰り入浴
下山したのは14時過ぎ、野地温泉ホテルの日帰り温泉は13時受付終了ということで残念ながら間に合いませんでした。今回は横向温泉口に建っている「森の旅亭マウント磐梯」に行くことにしました。ほのかに石油臭のある鉄分豊富な赤いお湯が源泉掛け流しで楽しめます。浴場は年季が入っていますが清掃が行き届いているので居心地が良く、レトロな雰囲気をゆっくり味わえます。泉質、雰囲気ともに素晴らしい旅館なので福島の百名山巡りの際にはぜひ寄ってみてください。
まとめ
箕輪山は安達太良の最高峰にして自然の魅力が詰まった山です。のどかな風景の広がるブナ林やササ原を抜けて鬼面山の頂上に立てば視界が一気に開けて、福島市街地から磐梯山、吾妻山まで見渡す大パノラマが広がります。秋になり山一面が紅葉に染まった箕輪山の姿は一度見たら忘れられない景色です。どこから登っても素晴らしい景色が待っている安達太良山、その魅力をまた一つ知ることができました。
公式サイト
藤縄明彦・工藤 崇・星住英夫(2006) 詳細火山データ集:安達太良火山.日本の 火山,産総研地質調査総合センター (https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/adatara/index.html)
生物多様性センター(2003)1/25,000 植生図「安達太良山(あだたらやま)」(http://gis.biodic.go.jp/webgis/files/vg67/jpg/564032.jpg)
深田久弥(1978)『日本百名山』新潮文庫
岡陽子 編(2020)『日本百名山山歩きガイド 上』JTBパブリッシング
沼田眞・岩瀬徹(2021)『図説 日本の植生』講談社学術文庫