【阿武隈】木幡山 隠津島神社〜平安以来の伝統受け継ぐ神域の山〜【3月】

木幡山アイキャッチ

木幡山について

木幡山の基本データ

所在地:福島県二本松市・川俣町

山系:阿武隈山地

標高:666m

選定:うつくしま百名山

木幡山は二本松市と川俣町の間に位置する阿武隈山地の一座。山全体が隠津島(おきつしま)神社の境内地であり、山域を広く杉林に覆われ尾根には経塚が残る歴史深い信仰の山です。冬には前九年の役に縁を持つ「木幡の幡祭り」という祭りの終着点にもなっており、当地の文化と強く結びついた山といえます。

隠津島神社について

名称隠津島神社
読み方おきつしまじんじゃ
鎮座地福島県二本松市木幡字治家49
令制国陸奥国
創建神護景雲3年(769年)
主祭神宗像三女伸
社格式内社論社(小社)
旧県社
本殿様式(造営年)三間社流造銅板葺(1789年)

隠津島神社は宗像三女神を祀る神社であり、神仏分離以前は木幡山弁天として別当寺の治陸寺とともに信仰を集めていました。明治以降は治陸寺が廃され弁天宮は神社として木幡山に鎮座することになりましたが、現在に至るまで「木幡の弁天様」として地域の人々に親しまれています。

隠津島神社拝殿
隠津島神社拝殿

領主からの崇敬も篤く、境内には二本松藩第7代藩主丹羽長貴公により造営された荘厳な本殿と拝殿が現存しています。本殿は1789年、拝殿は1800年に造営されたものでいずれも市の指定有形文化財になっています。

三重塔
三重塔

拝殿手前の参道階段脇には神社としては珍しい三重塔が建っており、神仏習合の歴史を色濃く残しています。天正年間の伊達氏による戦火を唯一逃れた建造物がこの三重塔であったとされ、延宝2年(1674年)に二本松藩初代藩主丹羽光重公により修復されました。その後明治35年(1902年)の暴風により倒壊して大修理されたものが現存しています。

杉林

神域として守られてきた山中には巨大な杉が鬱蒼と生い茂っており、県の名勝および天然記念物に指定されています。伝説によれば、前九年の役の際に劣勢であった源頼義とその子源義家(八幡太郎義家)が木幡山に陣を敷いた際に、山中の杉林が雪を被ってさながら源氏の白い旗を掲げた大軍勢のように見え、安倍氏の軍勢を戦わずして退散させたといいます。これこそが現代に続く「木幡の幡祭り」の由来といわれており、杉林が作り上げる美観は連綿と受け継がれてきた木幡山の歴史と文化の象徴です。

隠津島神社ルートについて

木幡山・羽山 / 白雀さんの木幡山羽山(福島県伊達郡川俣町)の活動データ | YAMAP / ヤマップ

木幡山の山頂には南北から登山道が伸びています。南からは隠津島神社を経由する隠津島神社登山口ルート、北に連なる羽山を経由するルートには福沢羽山登山口や日吉神社登山口など複数の登山口があります。

今回は南の隠津島神社から登り木幡山を過ぎて羽山のピークまで行って帰ってくることにしました。このルートは神社、経塚、杉林といった木幡山の魅力をまとめて楽しめるので初めての木幡山登山には最適だと思います。

特に木幡山から北の羽山へ向かう道では杉の巨木が林立する美しい景色を見ることが出来るので、木幡山のピークを越えて羽山まで歩くのをおすすめします。

登山記録

参道を抜けて登山道へ

一の鳥居

隠津島神社駐車場へ向かう道の途中に一の鳥居が立っています。石段の先に立つ両部鳥居が絵になります。ここから車で5分ほど先に駐車場があります。

登山口

駐車場に着きました。ここが参拝者入り口兼登山口となっています。白い鳥居をくぐって登山開始です。

登山口階段

しばらくは階段を登っていきます。早くも鬱蒼とした森の雰囲気が漂ってきて良い感じです。

安達太良遥拝所

道中には安達太良山の遥拝所があります。羽山、口太山そしてここ木幡山といった安達地区の山々からは安達太良山が綺麗に見渡せます。

大杉手前

あえて階段から逸れて山道を登っていきます。

木幡の大杉

登り切った先には「木幡の大杉」が立っていました。樹高20mで推定樹齢は800年といわれる木幡山の長老のような巨木です。割れた幹には鉄板が張られ枝には支えが付けられていますが、青々と茂る葉からは今なお盛んな樹勢が感じられます。

拝殿

こちらが拝殿です。お参りは帰りに寄って行くことにしてまずは木幡山の山頂へ向かいます。

拝殿脇の道

拝殿から西の方へ向かいます。

摂末社

多数の摂末社が立ち並ぶ場所に出ます。

養蚕神社

赤い社殿の養蚕神社の裏手に進みます。こちらの社殿は2021年のクラウドファンディングで修復されたものみたいです。

登山道入り口

経塚の案内板があるので、これに従い山道を登っていきます。

登山道階段

ここからが本格的な登山道です。

経塚と木幡山山頂

奇岩
経塚手前

雑木林を進みます。ちらほらと巨岩が転がっていて阿武隈の山らしい風景です。

経塚西

経塚の西端に着きました。

経塚群

看板の奥に進むと尾根に沿ってポコポコと土が盛り上がっているのが分かります。出土された経筒などから平安時代末期(12世紀頃)に作られた経塚といわれているようです。前回訪れた際はササが茂っていた記憶があるのですが刈り払われて経塚の様子が分かりやすくなっていました。

岩石群

蔵王宮があったとされる経塚西端の岩石群からも祭祀品が出土しており、これらも信仰の痕跡と考えられています。木幡山の長い歴史を感じさせる遺跡です。

木幡山への看板

私が初めて木幡山に来た時には経塚まで登った所で満足して山を下りてしまったのですが、実はここは木幡山の山頂ではありません。経塚の先に道が続いているので看板に従って進みます。

石祠

道の脇には小さな祠がありました。桃か矢じりのような形の窓がおしゃれですね。

倒木
木幡山手前

倒木を乗り越えて杉林を抜けていきます。

木幡山頂上

木幡山の頂上に着きました。木幡山は基本的に杉が目立つ山なのですがこの辺りは松林になっています。展望は無いですが開けた雰囲気の山頂です。

木幡山の杉林を歩く

杉林1

木幡山の北に連なる羽山まで歩きます。

杉林2

ここからの道は杉の木が密に生える林の中を歩いていきます。

杉林3

空に向かって真っ直ぐ伸びる杉の木が整然と立ち並ぶ姿が神秘的です。

杉林4

上を見上げると杉同士が絶妙な距離感を保ちながら枝を伸ばしているのが分かります。

杉林5

陽が射してくると雰囲気が一変します。いつまでも見ていられる景色です。

杉の実

枝に目を向けると実を付けていました。松ぼっくりより小さくコロッとしていて可愛いです。

羽山手前

杉林を抜けて尾根上に出ます。鬱蒼とした杉林から一気に明るい雰囲気になりました。

羽山山頂

羽山頂上に着きました。この辺りには「羽山」の名が付く山が多いので地名を冠して福沢羽山と呼ばれることもあるようです。

下り階段

羽山で引き返し同じ道を戻っていきます。下りは落ち葉で滑らないように注意です。

隠津島神社参拝

拝殿2

帰りに隠津島神社にお参りして行きます。拝殿は二本松藩主丹羽長貴公により寛政6年(1794年)に竣工されたものです。重厚な佇まいで迫力があります。少し黒っぽくなっているのが渋いですね。

向拝彫刻

向拝に施された彫刻が特に印象的でした。龍から波飛沫に至るまで立体的に仕上げられていて見応えがあります。

本殿

寛永12年(1800年)竣工の本殿は三間社流造で梁間二間の大規模な造り。随所に細やかな装飾が施されており、懸魚まで立体彫刻になっているという精緻な意匠は必見です。

三重塔全体

正面階段の脇に三重塔が建っています。廃仏毀釈で全国各地の神社境内に建つ仏塔類は大多数が破壊されてしまったので、神社にこれほど立派な塔が残っているのは珍しいです。

三重塔アップ

鮮やかな赤色が杉林に映える美しい塔です。

下山道

神社の参道を下りて駐車場に戻り下山完了です。

あとがき

神社巡りで頻繁に訪れていた木幡山ですが、山中からも随所に深い歴史が感じられる味わい深い山でした。参拝したことがあるという方も是非もう少し足を延ばして木幡山の深い魅力を感じてみて下さい。

公式サイト

木幡山 隠津島神社


参考文献・Webサイト

二本松市 編『二本松市史』第9巻 (各論編 2 自然・文化・人物),二本松市,1989.5.

福島民友新聞社編集局 企画・編集『ふくしまの風土 : その人と心』,福島民友新聞社,1978.2.