【東北】西吾妻山~天元台から夏の吾妻山トレッキング~【8月】

西吾妻山アイキャッチ

西吾妻山について

吾妻山の基本データ

所在地:山形県・福島県

山系:奥羽山脈

標高:2,035m(西吾妻山)

選定:日本百名山

西吾妻山は福島県と山形県の県境に沿って東西に長く稜線を伸ばす吾妻連峰の最高峰です。全体にわたって登山道が整備されている吾妻連峰ですが、とりわけ山体の東端と西端に登山対象の山が集中しており東であれば一切経山、西であれば西吾妻山を中心とした日帰り登山が吾妻山登山の人気コースとなっています。

これまでの記事では東側の浄土平から一切経山に至る登山コースを紹介してきました。興味のある方は下記リンクからご覧ください。

【東北】吾妻山登山〜浄土平から一切経山経由で家形山へ〜【7月】 【東北】一切経山〜浄土平から残雪期の「魔女の瞳」へ〜【4月】

今回の記事では西吾妻山を中心とした登山道を紹介したいと思います。現在でも火山活動の続く浄土平火口をはじめとして火山活動の痕跡を色濃く残す吾妻山の東側と比べると、西側には西吾妻山や西大巓(にしだいてん)、中大巓といった活動を終えた火山が緩やかに連なるのどかな景色が広がっており、これらの山体を覆うオオシラビソ林を始めとした豊かな自然が楽しめます。是非一切経山の記事と見比べながら吾妻山の多彩な魅力を知って頂ければ幸いです。

オオシラビソといえば樹氷の元になる木として良く知られています。吾妻山は東北有数の樹氷の名所であり、冬になると山全体が広大な樹氷原で覆われます。冬の登山記録は下のリンクからご覧ください。

【東北】西大巓~吾妻山の樹氷”リトルモンスター”を目指してスノーシュートレッキング~【2月】

天元台ルートについて

西吾妻山 / 白雀さんの西吾妻山の活動データ | YAMAP / ヤマップ

西吾妻山の麓には山形側の天元台高原と福島側のグランデコスノーリゾートの2カ所に索道が通っており、これらを利用して気軽に登山を楽しむことが出来ます。今回は山形側の天元台高原からロープウェイとリフトを乗り継いで1820m地点の北望台から西吾妻山山頂を目指しました。山頂自体に展望は無いのですが道中の梵天岩、天狗岩、人形石といったスポットからの眺めが良いのでこれらを周遊する形で歩くコースにしました。

登山道は総じて歩きやすく危険性の低い道がほとんどで初心者の方にもおすすめの山です。木道が多いですが露岩や石畳の上を歩く場面もあるので、底がしっかりした靴を用意すると足を痛めにくいと思います。

登山記録

天元台高原から登山開始

天元台高原湯元駅

朝の天元台高原ロープウェイです。青空の眩しい絶好の登山日和です。

湯元駅ロープウェイ

ロープウェイに乗って天元台高原へ。

天元台高原登り

天元台高原からリフトを三本乗り継いで北望台まで向かいます。

ヨツバヒヨドリ
ヨツバヒヨドリ
エゾオヤマリンドウ
エゾオヤマリンドウ

眼下にはヨツバヒヨドリやエゾオヤマリンドウなどの高山植物が咲いていました。山の上ではどんな花に出会えるか期待が高まります。

北望台に着きました。その名の通り北に広がる米沢の街並みを一望する見事な景色が広がっています。

リフト脇に立つ安全の鐘を鳴らして登山開始です。

歩き始めて15分ほどは樹林帯の登りです。日当たりが良くカラッとして爽やかな森という印象です。

木々の合間に青空が見えてきました。

中大巓の南面はゴロゴロの岩に覆われており視界が開けてきます。この辺りはかもしか展望台というみたいです。

振り返って西側には幾重にも折り重なる稜線の先に飯豊の雄大な山塊が聳え立っています。確かに素晴らしい展望です。

中大巓を南に巻く道へ。この先から木道が敷かれています。

南方面に西吾妻山の全容が見えてきました。濃緑色のオオシラビソがびっしりと立ち並んでいるのが分かります。

木道の脇にはシラネニンジンやウメバチソウが咲いています。

そして湿原だったと思われる場所ではモウセンゴケが実をつけていました。山の麓はまだまだ夏ですがここまで来ると秋らしい風景が目立ちますね。

人形石と西吾妻山の分岐です。右に曲がって西吾妻山へ向かいます。

西吾妻山を眼前に据えて梵天岩へ

ここから見上げる西吾妻山の山容が実に見事で、個人的にはこのルートで一番印象的でした。なだらかな西吾妻山の山肌に雪田草原、ササ草原、低木林といった植生が入り組んで分布することで風景に複雑な陰影を描くとともに、稜線をオオシラビソ群落が覆いつくすことで山の輪郭が明瞭に浮かび上がってきます。のどかでありながらもメリハリの付いた絵になる景色です。

このあたりではイワイチョウをしばしば見かけました。

木道を過ぎて林の中に入ると大凹の水場が見えてきます。ここから岩場の急登が始まるのでしっかり休憩をとっておきましょう。

こんな感じの大岩がゴロゴロ転がる坂を登っていきます。

草むらを覗き込むとミヤマリンドウが花弁を開いていました。

梵天岩まで30分ほど岩場、石畳、木道が交互に続きます。林、湿原、草原という風に植生も目まぐるしく推移していくので歩いていて楽しい道です。

チングルマは花期を終えて綿毛を揺らしていました。

西吾妻山に近づき最初に見えてくるのが梵天岩の岩稜です。角ばった岩が地面から突き出てきたみたいで迫力があります。

梵天岩の上は平坦で広々しています。

南を向いて西吾妻山方面。木の先にはたくさんの球果がついていました。風が通り抜けるのでオオシラビソから放たれる爽やかでほのかに甘い香りがダイレクトに感じられます。この香りの正体は防虫殺菌作用をもつ複数の揮発性物質であり総称してフィトンチッドと呼ばれています。

北の方を振り返るとここまでの道のりが一望できます。左半に聳えるのが中大巓で、あの山の北面をリフトで登って向こう側から手前に歩いてきたことになります。中大巓の手前には池塘がポコポコと点在しているのも見えます。右の方には東吾妻へ稜線が連なっています。いつかは吾妻山縦走もしてみたいと思いつつ早数年。車とかどうするんだとか考えるとソロで縦走するのはハードルが高いなと思ってしまいます。

ちょっと進んで天狗岩まで来ました。帰りにじっくり見て回るので一旦通り過ぎます。

西吾妻山のピークを目指す

先に西吾妻山の頂上に向かいます。山体がなだらかなので距離感が掴みにくいですが天狗岩からは15分ぐらいで着きます。

木道を過ぎて林の中に入っていきます。シャクナゲやカエデ、ササなどが人の背丈ぐらいに伸びていて中大巓の辺りより鬱蒼とした雰囲気です。

西吾妻山のピークに着きました。眺望が全くないということでガッカリされることもありますが、個人的には森の中にひっそりと立つ山頂標にオオシラビソの香気も相まって独特の風格を感じる印象的な場所でした。

西側に下りて西吾妻小屋に来ました。豪雪地帯の山小屋なので二階建てで上にも入り口が付いてます。避難小屋ですが中は清潔に保たれていました。冬はここに泊まってゆっくり雪山歩きというのも楽しそうです。

天狗岩方面に向かいます。小屋の周りは湿原地帯が広がってます。オオシラビソのシルエットが青空に映える良い景色です。

シラタマノキやネバリノギランが実を付けていました。一見枯れた雰囲気の秋の山というのもよく見てみると結構賑やかです。

天狗岩

天狗岩に戻ってきました。岩塊の西端の見晴らしの良い場所に吾妻神社が鎮座しています。

こちらの吾妻神社の創建について調べたところ、昭和五年に米沢の佐藤吉太郎という方が主導して建立したのが始まりのようです。吾妻山の山中に吾妻権現参詣の為の施設を作りたいという思いから吾妻権現讃仰会を組織し、権現堂の建立に加えて参道を開き避難所の設置まで行ったらしく、こうした先人の尽力が今に繋がっているのだと思うと敬服するばかりです。

ちなみに西吾妻山と沢を挟んで東に聳える中吾妻山には吾妻修験ゆかりの神社と伝わる吾妻山神社が鎮座しています。社殿は建っておらず温泉の湧く岩場が神社と呼ばれているという(出羽の某社を思わせる)大変珍しい形式のものらしく一度は訪れてみたいのですが、一般登山道ではたどり着けない場所なので土地勘の無い自分一人では厳しそうです。

文献には社殿は昭和五十八年に再建されたとの記述がありましたが建物の雰囲気を見るとそれぐらいの年季が入っているように見えます。背の高い石垣に覆われた建屋は一間社流見世棚造で山上の社らしい無骨でどっしりした佇まい。棟木が横に張り出しているのは神明造を意識した意匠でしょうか。

近づいてよく見てみるとシンプルながら手の込んだ形状の木鼻がそっと添えられています。下に置いてある板には千勝院の文字がありました。米沢の善日山千勝院は上杉家ゆかりの寺院であり、西吾妻山の山開きの際には住職が出向き祈祷を行っているという吾妻山と関係の深い寺院です。

北側に米沢盆地を一望できます。石垣に囲まれた一際大きい岩が天狗岩でしょうか。

前には何か建っていたのかと思えるような形で囲われています。草むらになっているところを見ると岩をどけて整地した跡のようにも見えますが詳細は分かりませんでした。昭和初期の記録には吾妻神社の近くに風雨をしのぐための石室があったという記述があり、もしかしたらここにそれが建っていたのかなとも想像できそうです。

周りは開けているので、腰を下ろして休憩している人がたくさん居ました。私もそれに倣い米沢市内を見下ろせる場所を取ってちょっと休憩。

景色を十分楽しんだので来た道を戻っていきます。梵天岩まで戻り池塘群を眺めながら中大巓の方へ進んでいきます。

帰り道も見晴らしが良く右奥の方には一切経山の荒涼とした山頂部までくっきり。

ヤマハハコやヒカゲノカズラが陽の光を浴びて揺れていました。

中大巓の斜面をちょっと登り返して人形石の分岐に着きました。帰り道は右に向かい人形石に寄っていきます。

人形石への道は石畳で整備された草原の道です。中大巓のピークを巻いている感じがよく分かります。

人形石に着きました。天狗岩などと同様に開けていて展望もいいので休憩には最適な場所です。

上にポコっと飛び出ているのが人形石でしょうか。とても人形には見えないですが昔は岩が積み重なっていたりして存在感があったんでしょうか。あるいは梵天岩や天狗岩といった命名から類推するに形代として用いた人形(ひとがた)を指している可能性もあるかもしれません。

人形石の辺りは砂場に石が落ちているような感じの場所で、天狗岩周辺の大岩が転がっていた景色とは雰囲気が違いますね。

リフト乗り場への道は西側の森の中に続いています。人形石からはリフト乗り場への道と東吾妻山への縦走路が通っているので間違えないように注意してください。

中大巓の北面は鬱蒼とした森の中です。

ヨツバヒヨドリ
カニコウモリ

樹林帯でよく見るイメージのヨツバヒヨドリやカニコウモリが咲いていました。南面の湿原や草原地帯とは雰囲気が結構違います。

山頂駅まで戻ってきました。帰りもリフトで一気に下ります。

リフトから見下ろす米沢の街並みが綺麗でした。上りが楽なのも良いですが下りの景色こそリフトの醍醐味だと思います。

リフトの乗り継ぎの時にホシガラスが出迎えてくれました。平地では見かけない鳥ですが高い山に登るとよく会います。

天元台にはレストラン、お風呂、宿泊施設など色々揃っているのでここで一日ゆっくりしていくのも良さそうです。

最後にロープウェイに乗って下山完了です。

あとがき

夏の西吾妻山ではゆるやかな山容を巡りながらお花畑に湿原、オオシラビソ林といった様々な景色を楽しむことが出来ます。車で登山口までアクセスできる浄土平と比較すると落ち着いた雰囲気があるので山の上でゆっくりしたいという方には特におすすめしたい山です。冬になると樹氷に覆われて風景が一変するので是非時期を変えて何度も訪れてみてください。

公式サイト

天元台高原

やまがた山


参考文献・Webサイト

阪野吉平 著『てっぺんで逢う : 置賜二等三角点紀行』,阪野吉平,1991.4.

米沢市史編さん委員会 編『米沢市史編集資料』第24号,米沢市史編さん委員会,1992.8.

畔上能力 編(2021)『山渓ハンディ図鑑2山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社

清水建美 編(2021)『山渓ハンディ図鑑8高山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社