

この記事は唐松岳・五竜岳縦走の2日目(牛首~五竜岳~遠見尾根)の登山記録です。1日目(八方尾根~唐松岳)は下の記事をご覧ください。

五竜岳について
所在地:長野県・富山県
山系:飛騨山脈
標高:2,814m
選定:日本百名山
五竜岳は唐松岳の南に位置する山で日本百名山の一座。重厚で貫禄のある山容を誇り、剥き出しの岩場が人を寄せ付けぬ威厳を感じさせる山です。唐松岳同様に東麓の白馬五竜スキー場からゴンドラに乗ってアプローチ出来るので、北アルプスの中では登りやすい山といえます。ただし登山道の遠見尾根は危険箇所こそ無いものの長い道のりである上に、五竜岳山頂直下は滑りやすい岩場が続くので、唐松岳と比べると少し難易度が上がります。
白馬五竜高山植物園


ゴンドラ山頂駅を下りた先、遠見尾根の玄関口である白馬五竜アルプス平には高山植物園が整備されています。6月から10月まで多種多様な高山植物が次々に咲き誇り、白馬連峰の雄大な景色をバックに花を楽しむことができます。

エンビセンノウやビッチュウフウロなどの生息域の限られる貴重な高山植物も咲いているので、普段山に登らない方はもちろん、山に一杯登っている方にもきっと新たな出会いがある五竜岳のおすすめスポットです。遠見尾根から上り下りする際には植物園の中を通っていくことになるので是非じっくり観察していきましょう。
今回は見ることができませんでしたがヒマラヤの青いケシやエーデルワイスといった海外の高山植物も見ることができるようなので、いずれは時期を合わせて行ってみたいと思います。
唐松岳五竜岳縦走ルートについて
登山ルートの詳細については1日目の記事をご覧ください。
唐松五竜縦走(唐松岳頂上山荘泊) / 白雀さんの白岳(長野県)・西遠見山・唐松岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
山荘から眺める日の出

日の出を見ようかなと朝5時前に三脚とカメラとちょっとの荷物だけ持って外に出ます。唐松岳の方を見ると山頂には既に結構人がいました。今回は朝日に照らされる唐松岳を見たいので小屋の近くで日の出を見ることにしました。

八方尾根の向こうから太陽が上がってきました。

この日は下界に薄っすらと靄が掛かっていて幻想的でした。

ほんのちょっとの間ですがモルゲンロートも楽しめました。唐松岳の山肌がぼんやり赤みを帯びて綺麗です。一瞬で終わってしまうのもまた趣がありますね。

こんな感じで小屋の裏にある高台で朝日を見ている方もたくさんいました。

少し唐松岳の方に移動して白馬方面も眺めてみます。朝日に照らされ黄色く輝く不帰の嶮と靄の中に聳える白馬。次来たときは向こう側へ行ってみたいです。

西の方を見ると昨日は雲に隠されて終ぞ見えなかった立山連峰がくっきりと朝陽に浮かび上がっています。いつ見てもかっこいい山です。

日の出を楽しんだ後は朝食です。日本の朝ごはん的なラインナップでホッとします。

準備も済んだのでそろそろ出発です。ゆっくりしてる内に小屋は空っぽになってました。
五竜岳を眺めながら歩く縦走路

頂上山荘から唐松岳方面への入り口です。この岩山を登るの!?と思いきや右の方に巻いていく感じで道が通ってました。

唐松岳から五竜岳方面に向かう場合には出発してすぐに牛首の鎖場に入ることになるので、ヘルメットは予め着けていくのがおすすめです。

牛首の鎖場と五竜岳。道の右側がストンと切れ落ちているのでかなり高度感があります。足場は結構広くてグリップも効くので見た目ほど難しい道ではない印象です。

先ほどの岩場をトラバースした後は少し長めの岩場の下りがあります。こちらは下った後に振り返って見上げた写真になります。岩が角張っているので足を置きやすいのがありがたいです。

ちょっと進んだらまた鎖場があります。一部足の置き場がほとんどない場所があるのでしっかりつま先で踏ん張って越えていきます。

五竜岳がちょっとずつ近づいてきました。唐松岳~五竜岳の縦走路は見晴らしが良くて目的地の山をずっと眼前に捉えながら歩けるというのが良いですね。

最後に牛首の岩場を登っていきます。

岩の間の凹を跨いだら岩場は終わり。ここから五竜山荘までは解放感のある稜線歩きになります。

立山連峰を背景に聳える五竜岳。なんとも贅沢な景色が広がっています。



岩場、ザレ場を過ぎると草木が増えてきて、道端に咲くイワツメクサやオヤマリンドウが目につきます。



道は大黒岳の辺りで樹林帯を軽く横切る形となり、ゴマナやヤマセンキュウ、ミヤマアキノキリンソウなどこれまで見かけなかった花が咲いていました。

看板が見えてきたら五竜山荘まであと1㎞ぐらいです。

この辺りで唐松岳の方を振り返ってみます。唐松岳に至る道のりは岩肌がむき出しで結構荒々しい雰囲気だったんですね。下っている感じは見晴らしが良くて爽やかな感じの登山道だったので、結構見た目とギャップのある道みたいです。

ここからの道が結構好みでした。

斜めに突き出た山塊にみっちりハイマツが生えて緑の壁のように聳え立ち、その表面に登山道がくっきり浮かび上がっています。

夏空の下で鮮やかに輝く緑、その中に通る道。自然の中に身を投じるという山歩きの本質を象徴するかのような景色に心が躍ります。

五竜山荘の裏手まで来ました。

そして五竜岳に至る道のりの全貌も見えてきました。山にへばりつくように伸びる登山道が堪りません。頂上近くの岩壁はどんな感じで道が引かれているのか想像が付きません。もちろん地図上では確認しているのですが。

五竜山荘前、右下に見えるのがテント場です。一日目の唐松岳頂上山荘で見かけた方が居たので少しお話しました。アクションカメラで風景やタイムラプスを撮っていたので興味がわき、導入してみたいなーなどと思ったのでした。これから天気が下り坂だからお気をつけてとお互い声を掛け合いました。
岩場を越えて五竜岳登頂

いよいよ五竜岳に向かうのですがちょっとだけペースをあげていきます。荷物は山荘にデポしてアタックザックで登ることにしました。



最初の方はひたすらザレ場、道は広くて歩きやすいです。左手に聳え立つピラミッドを通り過ぎると鎖場が現れます。ここは鎖を持たなくても行けるぐらいの易しい岩場でした。

最初の鎖場を越えた先に待つ山頂直下の岩場が今回の大本命。転んでカメラをぶつけたら洒落にならないのでザックにしまっていきます。


平らに割れた大き目の岩塊がゴロゴロ転がっていて結構滑ります。滑りそうだなーとスマホで撮ったこの乗り越えの部分で踏み出した足がツルっと滑って肝が冷えました。鎖が無ければ怪我してたと思います。

難所を乗り越えていよいよ五竜岳山頂が見えてきました。

そして遂に登頂、したはいいものの周りは完全にガスに覆われて真っ白です。一足遅かったよ。

雲間に霞む唐松岳。朝の青空がウソみたいな風景です。

なんにも見えないので早々に下りることにしました。鎖場やら岩場をすっ飛ばして五竜山荘の近くまで下りてきました。

この辺りから下りの遠見尾根を見渡せます。雲がもこもこ湧いてきて遠見尾根にぶつかっているのが見えます。


五竜山荘は左手にテント場があり、唐松岳頂上山荘と比べると結構近いのでテント泊初心者の方はこちらの方が安心感がありそうですね。小屋正面の武田菱がクールな建物です。
遠見尾根を一気に下る

山荘の裏をちょっとだけ登り返して遠見尾根分岐に来ました。ここから下っていきます。


10分ほど進んだ先に岩場の下りがあります。かなりグリップの効く岩場なので鎖を使わなくても歩けるぐらいの易しい岩場でした。



岩場を越えてササ林を抜けたら登山道脇にはカライトソウが揺れていました。

最後の鎖場はちょっと長めなので三点支持でゆっくり下りました。

急斜面につけられた階段。結構高度感があって、ここが一番怖かったかもしれません。


西遠見山のピークは気づかぬうちに越えていました。東側には西遠見の池という小さな池がありました。

ここからは踏み固められたハイキングコースのような道になるのでゆるく歩いていきます。

大遠見山に着きました。曇っているので展望は皆無でした。

曇りの日はオヤマリンドウがしっとりとした雰囲気で画になります。


階段を登って中遠見山に登頂。晴れていたら白馬が綺麗に見えたんだろうなー。


ホツツジやカニコウモリなど樹林帯らしい花が群生していました。遠見尾根と八方尾根はかなり花の種類が違いますね。もしかしたら八方尾根も黒菱平辺りから登るとこんな感じなのかもしれませんが。

小遠見山は15時までに通過するようにと張り紙がありました。現在14時23分、概ね予定通り歩けています。道中で花を見たり景色を見たりしてるのでスローペースはいつものことです。


小遠見山の先は木道や階段がメインになってきます。



地蔵の頭分岐で地蔵の沼のほうに来ました。池の畔にハクサンシャジンが揺れています。1日目の写真よりこっちの方がハクサンシャジンの特徴が明確ですね。花が3~4段ほど間隔をあけて輪生しています。


イワショウブやオヤマボクチも咲いてます。

地蔵の頭の先は白馬五竜高山植物園です。


アサマフウロやコマクサなど高山植物が色々咲いていました。

エンビセンノウを見ることができたのはとても嬉しかったです。絶滅危惧種で北海道、青森県、長野県にしか自生しないという大変貴重な花です。カワラナデシコやフシグロセンノウのような普通種でも見かけたらうれしくなるぐらいにはナデシコの花が好きなので野生のエンビセンノウもいつか見てみたいです。

お花畑を楽しんでいる内に五竜テレキャビンのアルプス平駅に着きました。

ゴンドラに乗って麓のエスカルプラザに到着し無事下山完了です。
あとがき

2019年に八方池をトレッキングしてからずっと憧れていた八方池の先の世界へ遂に足を踏み入れました。あの頃は写真こそ撮りまくっていたものの、まさか自分が登山をやるようになるとは思ってなかったのでなんだか感慨深い気持ちで一杯です。
唐松岳頂上山荘は清潔で広くてご飯も美味しい、何度も泊まりたくなるような素晴らしい山荘でした。唐松五竜縦走だけでなく不帰キレットにも行ってみたいのでその際はまたお世話になりたいと思います。
阿武隈の低山にふらっと訪れて山の中にただ一人だけの孤独な世界に浸るのも大好きだったのですが、唐松五竜縦走の道中でたくさんの人と交流して山の魅力を分かち合っていると、こういうわいわい楽しい登山も良いものだなと感じる良い機会になりました。
今後も近所ののどかな里山や多くの人で賑わう人気の山など色々な山を選り好みせず登り続けたいと思います。
公式サイト
深田久弥(1978)『日本百名山』新潮文庫
岡陽子 編(2020)『日本百名山山あるきガイド 上』JTBパブリッシング
畔上能力 編(2021)『山渓ハンディ図鑑2山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社
清水建美 編(2021)『山渓ハンディ図鑑8高山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社