
燕岳について
所在地:長野県
山系:飛騨山脈
標高:2,763m
選定:日本二百名山
燕岳は北アルプス南東部に広がる常念山脈の一座です。「表銀座」と呼ばれる常念山脈稜線部への玄関口であるとともに北アルプス入門の山としても知られており、ビギナーからベテランまで季節を問わずたくさんの登山者が訪れます。
北アルプス三大急登に数えられる「合戦尾根」を登った先に広がる花崗岩質の白い岩稜と真砂土、そして鮮やかな緑色のハイマツ林が織りなす美景が登山者を魅了し付いた異名は「北アルプスの女王」。砂礫の斜面にコマクサが咲きハイマツ林にはライチョウが歩く、アルプスの魅力をギュッと詰め込んだような山です。
中房登山口ルートについて
合戦沢の頭・燕岳 / 白雀さんの燕岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
燕岳の定番ルートは東麓の中房登山口から合戦尾根を登り頂上に至る登山道です。道中には合戦小屋、燕山荘という2ヶ所の有人小屋があり特筆すべき難所は無いので、初めての本格的な登山にオススメのルートといえます。ただし北アルプス三大急登と言われるだけあって中房温泉から燕山荘への道のりは険しく、約4.5kmの歩行距離で約1,300mの標高差を登り切る必要があります。累積標高は1,000m〜1,200m辺りを超えると必要な体力量が一気に増えてくるので、燕岳に登る際はしっかり体力をつけて望みましょう。
中房登山口の駐車場は3ヶ所あります。今回は前日入りして車中泊しましたが、朝起きたらほとんど満車になっていたので早めの到着がオススメです。
第1駐車場は2025年から1日3000円の有料予約駐車場となりました。タイムズのBというサイトから予約でき、当日予約も可能なようです。遠方から訪れる登山者にとって、予約すれば必ず停められるというのはありがたい限りです。

「タイムズのB」の中房登山口第一駐車場はこちらのページから予約できます。土日は満車のことが多いので早めの予約がおすすめです。

合戦小屋への道は基本的に整備された樹林帯歩きとなりますが、木の根が露出している部分が度々あるので転倒には注意です。道中には四ヶ所のベンチが設置されています。第一、第二、第三、富士見ベンチとそれぞれ名付けられており、ここを目安にして休憩を挟みながら登るとちょうど良いペースで合戦小屋まで辿り着くようになっています。

合戦小屋から燕山荘への道には岩場や鎖場が何カ所かあります。難しいものではないですが登りの後半ということで疲労が溜まっており、もう少しで燕山荘という点で気が緩む場所でもあるので慎重に。
燕山荘から山頂への道は前半がザレ場、後半が岩場となっています。特に危険個所の無い安全な道ですが稜線上なので登山道を外れると滑落の可能性はあります。悪天候や夜間など視界不良時は注意です。

今回は合戦尾根を登った先に建つ燕山荘(えんざんそう)に宿泊しました。小屋泊、テント泊ともに予約制となっています。当日予約も空きがあれば受け付けており、この日は当日朝に電話をして予約しました。非常に人気のある山小屋であり土日や連休は満室が当たり前なので事前の予約は必須です。
中房温泉から合戦尾根を登る

唐松五竜縦走から2日後の朝、中房登山口第一駐車場です。白馬村で丸一日ゆっくり疲れを癒して中房温泉登山口で車中泊。8時前に起きて外を見てみたらものすごい数の車が停まっていて驚きました。8時までぐっすり寝てたからだと言われたらその通りなのですが。

着替えて準備をしたら登山開始です。といっても駐車場から登山口まで10分ほどは車道の歩きです。結構交通量があるので注意してください。


中房登山口に着きました。ここからが合戦尾根、燕山荘までひたすら樹林帯の登りになります。


木の根っこが目立つ野生的な道です。かっこいいけど滑りやすいのがちょっと困りどころ。


キノコやゴゼンタチバナの実は見かけますがお花は見かけませんでした。

一気に富士見ベンチまで登って来ました。結構森が深いので8時過ぎから登り始めても涼しくて快適にここまで来れました。


富士見ベンチから合戦小屋まではちょっと傾斜が緩くなるのでどんどん進んでいきます。足元に岩塊も現れ始め、燕岳らしい道になってきました。
合戦小屋から燕山荘へ

合戦小屋に着きました。登山者の方でごった返していましたが何とか席を確保できました。

合戦小屋は長野県産のデッカいスイカを提供していることで有名な山小屋で、周りにもスイカを頼んでいる人がたくさんいました。ということで今回頼んだのはもちろん合戦小屋名物のスイカ!では無くて豚汁です。水でお腹が冷えていたので今回はスルーしました。

代わりにスイカが可愛い手拭いとバッジを手に入れました。


小屋の周りにはオヤマリンドウやヤマハハコが咲いていました。

栄養補給は済んだので燕山荘に向かって出発です。結構曇ってきたので早めに小屋に着きたいところです。


合戦沢の頭を超えた先には岩場やちょっとした鎖場があります。


この辺りにはアオノツガザクラやミヤマトリカブトが咲いていました。

燕山荘に着きました。

内装がレトロでおしゃれです。


フロントのある本館、第一別館、第二別館、新館の四棟から成り、中はかなり広くて入り組んでいます。本館から渡り廊下を抜けて第一別館へ移動し、二段ベッドの間を抜けて階段を上がり通されたのは屋根裏部屋みたいな感じの場所。一人分のスペースがかなり広めに取られていて梁の下の辺りにも荷物を置けたので快適でした。
霧の中の燕岳
小屋に着きお昼を食べてもまだ13時頃だったので、ちょっとガスは濃いですが燕岳山頂まで行ってみることにしました。こういう天気だとライチョウに出会えるかもしれないので。

小屋の周りにはトウヤクリンドウが目立ちます。

9月なので終わりかけですがコマクサが何とか咲き残っていました。

山頂への道は基本的に真砂土歩きです。周りに花崗岩の巨岩奇岩が一杯立っています。

有名なイルカ岩です。槍穂高をバックに撮るのが定番ですがガスで何にも見えませんでした。

あたりを見回しながら歩いているとハイマツ林の中に佇むライチョウを見つけました。一切身動きせずジーッとしているので一瞬岩と見分けが付きませんでした。秋羽の迷彩効果は優秀ですね。



積み石を越えた先にはメガネ岩があります。岩場を乗り越えて振り返るとメガネ部分が分かりやすいです。

頂上へはちょこっと登りがあります。



岩場の間を抜けて岩の上に掘られた階段を登った先が頂上です。

賽銭には海外のお金も色々置いてありました。燕岳の人気っぷりはすごいですね。

帰りは岩場を伝って戻りました。

至る所から岩が生えていて帰り道も新鮮味のある風景です。

山荘の前辺りから撮った風景。ガスが晴れて境界明瞭な雲になってきたのでカッコいい景色が撮れました。

夕飯です。人が一杯来る山荘なだけあってかなり豪勢な食事でした。まさかのデザート付きです。

帰りにお弁当を受け取り明日の出発に備えます。
燕岳で迎える日の出


19時前からぐっすり眠って朝4時頃起床。窓から外を見て見ると既に頂上に向かう人が行動開始しているようです。こちらもそろそろ日の出を見に出かけるとしましょう。

昨日下見は済んでいるので悠々と準備をして小屋を出ます。

真っ暗なので道中は省略。暗いと目印のロープが見えにくい場所もあるので注意です。

山頂に着きましたがやっぱりガスで何も見えません。

ということで燕岳ピークから西にちょっと下りた所でお弁当を食べながらまったり日の出を待つことにしました。

燕山荘はお弁当も豪華です。動物性タンパクがこんなに入ってる山小屋の弁当はなかなか無いと思います。


この日は東側からガスが沸いていたらしく西斜面の方は展望がありましたが、こんな感じで時間によってガスが出たり消えたりを繰り返していました。

裏銀座の上を流れる雲がオレンジ色に染まり始めました。日の出ももうすぐです。

稜線を朝陽が照らし始めました。この日は東の空に雲が多かったのでモルゲンロートは見られませんでしたがオレンジ色に染まる稜線が綺麗です。頭上が晴れているだけでもありがたいですね。

雲を冠る槍ヶ岳もかっこいいですね。

朝霧と北燕岳。向こうも岩峰が突き出していて景色がよさそうです。餓鬼岳方面は人も少ないみたいなのでゆっくり朝の時間を過ごせそうです。

燕岳と朝陽。雲越しに太陽が見えてミステリアスな雰囲気でした。

燕山荘方面です。燕岳の真っ白な稜線越しに見る燕山荘は画になるなーと思いました。南西方面に続く尾根が表銀座縦走路です。


朝陽が岩稜のテクスチャを際立たせて彫刻作品のように仕立て上げていました。

今度こそイルカ岩と槍ヶ岳のツーショットが撮れました。イルカに日が当たってくれていたら尚よかったんですがまあいいでしょう。

浮雲と燕山荘。メルヘンな燕山荘の外観ともこもこの雲が可愛いなーと思って撮りました。

爽やかな朝の光に輝く燕岳が印象的でした。山体が真っ白なので朝日の黄色や空の青色を跳ね返して入り組んだ色彩を見せてくれます。
合戦尾根を下る



燕山荘に戻ってきました。燕山荘正面の分岐から中房温泉口へ下りていきます。

東方面は雲だらけで下界の様子は全く見えません。



ベンチを越えてまた越えて。第二ベンチを過ぎた辺りで麓から合戦小屋への荷揚げ用ケーブルを見かけました。登るときは何故か気づかず通り過ぎていたみたいです。


樹林帯をひたすら下って駐車場に戻ってきました。

帰りは温泉セットを持って登山口沿いの「湯原の湯」でゆっくり疲れを癒しました。
あとがき
槍穂高や裏銀座を見晴らすアルプスならではの雄大な景色に加えて、純白に輝く燕岳の流麗な山容。そして居心地がよくて食事が美味しい至れり尽くせりのサービスが光る燕山荘。燕岳が北アルプス屈指の人気を誇る山である理由が良く分かる山行でした。
北アルプス遠征ということで唐松五竜縦走に続き燕岳に登りましたが、周囲に聳える山々がみんな個性的なので次はあっちにも登ってみたいという欲がどんどん湧いてきました。アルプスは一度行くと何度も訪れたくなる沼ですね。入門編のような山には結構登ったと思うので今度はもうちょっと挑戦的なルートにも挑んでみようかと思います。
公式サイト
畔上能力 編(2021)『山渓ハンディ図鑑2山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社
清水建美 編(2021)『山渓ハンディ図鑑8高山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社