【東北】高旗山~参道入口から大パノラマの頂上へ~【5月】

高旗山アイキャッチ

高旗山について

高旗山の基本データ

所在地:福島県

山系:奥羽山脈

標高:968m

選定:うつくしま百名山

郡山市街地と湖南町を繋ぐ三森峠の南側に聳える高旗山。その名は源義家が奥州征伐の際に山上で軍旗を掲げたという伝説に由来し、北に位置する安積山(額取山)と並び郡山の文化に深く結びついた山です。車で林道を進んだ先の登山口から登れば頂上まで一時間弱でたどり着くことができ、芝生張りの山頂からは猪苗代湖や磐梯山、飯豊連峰などを見晴らす景観を楽しめます。また春~初夏にはカタクリをはじめとした多様な山野草が咲き誇り登山道を美しく彩ります。

源義家は前九年の役や後三年の役で活躍した平安時代の武士であり、時の権力者たる源頼朝や足利尊氏も後に名を連ねることとなる「河内源氏」の名を高めた立役者の一人として各地に伝説を残しています。郡山では家臣である鎌倉景正とともに篤く信仰され、御霊櫃峠や多田野本神社、石筵、豐景神社など市内だけでも両者にまつわる史跡は枚挙に暇がありません。

山頂に立つ宇奈己呂和気神社奥宮

高旗山の山頂に建つ祠は宇奈己呂和気神社の奥宮です。安積郡で唯一『延喜式』の名神大社に名を連ねた宇奈己呂和気神社(郡山市三穂田町)はかつて高旗山の山頂にあったものを遷座したとされており、信仰の山としても深い歴史を持つことが分かります。主祭神は祓戸大神の一柱である瀬織津比売命とされており、記紀に詳述の無い神を単独で祀っている点が興味深い神社です。

また本宮市と大玉村に位置する大名倉山にはかつて宇奈己呂和気神が祀られており安達太良神社(本宮市)創建の際に安達太良の神とともに遷されたと伝わります。安達太良神社ではこの神を高皇産霊神、神皇産霊神として祀っているようです。高旗山と大名倉山は両者ともかつて山に祀られていた「宇奈己呂和気神」を里宮に遷した点で共通していますが関係性は不明です。

参道入口ルートについて

登山口は東麓の参道入口です。郡山湖南線の三森峠東側にある源田温泉に向かう脇道に入り、温泉の手前で左に曲がり林道を10分程進みます。参道入口に立つ鳥居が登山口の目印です。鳥居の手前とすぐそばに各5台ほどの駐車スペースがあります。Googleマップだと源田温泉から先の林道が表示されないので地理院地図や登山地図で確認しておくと良さそうです。登山道に難所はありませんが野生動物が多い山域なので熊鈴や笛などは忘れず持っていきましょう。

高旗山 / 白雀さんの高旗山(福島県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ

登山記録

参道入口から山頂へ

長い林道を走って登山口に着きました。画像右の路肩に駐車スペースがあります。道中は未舗装の部分も多いので気をつけて走ります。一度残雪期に来た際は車が雪に埋もれてスタックしかけたので、雨や雪の後に訪れる際は特に注意です。

登山口には宇奈己呂和氣神社奥宮の由緒書きと鳥居が立っています。薄緑色に塗装された鉄造の鳥居というのはなかなか珍しいです。山中にある鳥居は個性的なものが多く見ていて飽きません。

鳥居の傍にはカエルの置物が座っていました。「無事かえる」の験担ぎで登山口や山小屋でしばしば見かけます。

ブナやナラの雑木林を歩いていきます。木漏れ日が気持ちいい山道です。登山道は丁寧に整備されていて歩きやすいです。

春の定番フデリンドウがいっぱい咲いていました。

サワハコベは小さい花ですが繊細な造形で写真映えしますね。実物は非常に小さな花です。

カタクリはもう花が終わり実がついていました。

道中に水場がありました。参道入口からサクッと登る際は必要ないかもしれませんが、麓の源田温泉から登る際は重宝しそうです。

20分ほど歩いた参道看板の先から本格的な登り坂になってきます。道は広めに刈り払われているので快適です。

首の長いスミレが咲いていました。長く伸びた距(花の後ろ側)からナガハシスミレだと思われます。

少し岩の露出した道を過ぎた辺りに宇奈己呂和氣神社の看板と小屋があります。山頂はすぐそこですがノンストップで登ってきたので、ここでちょっと休憩。

干支と竜の可愛い木彫りが並べられています。竜だけバリエーション豊富です。

小屋の近くではタチツボスミレが群生していました。

登り坂の先に開けた場所が見えてきました。

山頂で景色を楽しむ

林を抜けて山頂に辿り着きました。周囲に高い木が無く芝生広場になっているので非常に開放感があります。この日は磐梯山まで綺麗に見えました。

右手に鎮座するのが宇奈己呂和氣神社奥宮です。なかなかに年季の入った雰囲気ですが看板を見ると平成五年と書かれていて、思ったよりは新しめでした。安積山から高旗山にかけての山々は、夏は暑く冬は冷たい季節風が吹き抜ける過酷な環境なので石祠が風化しやすいんでしょうか。酸性雨で溶けただけかもしれませんが。

北西方向には猪苗代湖の向こう、磐梯山、飯豊連峰まで見渡す大パノラマが広がります。登山口から1時間程度でこの景色が楽しめるのが高旗山のすごいところです。ここまで天気に恵まれると登った甲斐があるというものです。

岩上山越しに飯豊連峰がくっきり見えます。2024年の最大目標は飯豊登頂なので、しっかり目に焼き付けました。ここから3ヶ月後の8月に飯豊に登ることになります。

振り返って東方面には郡山の街並みも一望できました。空が広くて清々しい風景です。たぶん鎌倉岳とかの辺りが中央に見えているのだと思いますがここまで離れると阿武隈の山を見分けるのは難しいですね。右のほうのこんもりした大滝根山などは少し分かりやすいかもしれません。

一等三角点も忘れず見ておきます。もう一つ県内唯一の天測点が設置されていますがこちらは撮るのを忘れました。GPSが無い時代の貴重な遺構なので次来たときは忘れず撮らないと。

十分に景色を楽しんだところで下りていきます。

頭上から鳥の声がしたので顔を上げてみるとキビタキがいました。福島県の鳥なので県民としては見逃せません。葉っぱさえなければ全身を撮れたんですが、どちらにしろ望遠は持ってきてないので詮無きことでした。姿を見ることができただけでもよしとします。

あとは来た道を戻るだけです。

ツクバネソウの新芽らしきものを見つけました。咲いてるときにまた来たくなります。

行きでは気づかなかったミツバツチグリを眺めていたら登山口に着いていました。

源田温泉

登山口に至る山道の入り口にある温泉宿「森の宿forestバン源田」では日帰り入浴ができるので帰りに寄っていきました。源田温泉の名前は高旗山で戦った源氏の武士の「源」の字に因むもので高旗山とともに深い歴史を持つ温泉です。建物は清潔感があり風呂場も広くて山の疲れをゆっくり癒やすことができました。

あとがき

登山口から1時間ほどで登頂できる山としては破格の景観を誇る高旗山。種類豊富な花々が時期をずらして咲いていくのでいつ来ても新鮮な気持ちで楽しめます。郡山市中心部からも近いので空いた時間にちょっと登ってみたり、安達太良などに遠征に来た前後の日に足を延ばしてみるのも良さそうです。

公式サイト

forestバン源田


参考文献・Webサイト

林弥栄 監修(2021)『山渓ハンディ図鑑1野に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社

畔上能力 編(2021)『山渓ハンディ図鑑2山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社