【南アルプス】鳳凰山周回1日目〜青木鉱泉からドンドコ沢の滝を巡り鳳凰小屋泊〜【9月】

白雀
白雀

この記事は鳳凰山周回1日目(青木鉱泉~鳳凰小屋)の登山記録です。2日目(鳳凰三山縦走~青木鉱泉)は下の記事をご覧ください。

【南アルプス】鳳凰山周回2日目〜朝焼けの「オベリスク」と絶景の稜線歩き〜【9月】

鳳凰山について

鳳凰山の基本データ

所在地:山梨県

山系:赤石山脈

最高峰:2,841m(観音ヶ岳)

選定:日本百名山

鳳凰山は南アルプス北東部に聳える地蔵ヶ岳(2,764m)、観音ヶ岳(2,841m)、薬師ヶ岳(2,780m)の三座の総称であり、鳳凰三山とも呼ばれます。東には甲府盆地が広がり、西には甲斐駒ヶ岳や白峰三山といった山々が並び立つ、山深い南アルプスにおいて山地と平地を繋ぐように位置する山です。

深い樹林帯を抜けた先に広がる白い稜線と奇岩群が特徴であり、地蔵ヶ岳の山頂に立つ花崗岩の尖塔「オベリスク」は鳳凰山のシンボルとして知られています。三山を辿る稜線歩きは白峰三山や富士山を見晴らす抜群の展望を誇り、夏にはタカネビランジやホウオウシャジンといった南アルプス特産の希少な花々を見ることができます。

鳳凰山の三座については表記揺れが多く見受けられます。”ヶ”を除いて「地蔵岳、観音岳、薬師岳」とすることもあれば、韮崎市観光協会のHPには「地蔵ヶ岳、観音岳、薬師岳」と記載されています。今回は地理院地図に則り「地蔵ヶ岳、観音ヶ岳、薬師ヶ岳」としました。

地蔵ヶ岳の標高は山頂のオベリスクを含めて2,771mと表記されることもあります。

白く輝く稜線と奇岩群

南アルプス北部に位置する鳳凰山と甲斐駒ヶ岳は深成岩である花崗岩類の岩石で構成されています。南アルプスは大部分がプレートの沈み込みにより形成された付加体で構成されているので、これらは周辺の山と比べて異質な山であるといえます。

花崗岩類は節理に沿って風化が進みマサと呼ばれる白い砂を形成し、風化から取り残された部分がコアストーンと呼ばれる岩塊になります。鳳凰山を特徴づける、白く輝く山肌と見応えのある奇岩群はこうした地質学的特徴によるものです。

青木鉱泉登山口からの周回ルートについて

地蔵岳(鳳凰山)・赤抜沢ノ頭・観音岳(鳳凰山)・薬師岳(鳳凰山) / 白雀さんの地蔵ヶ岳・薬師岳・鳳凰山の活動データ | YAMAP / ヤマップ

鳳凰山のメジャーな登山道は東の青木鉱泉登山口からのドンドコ沢ルートと、南の夜叉神峠登山口からの夜叉神ルートです。前者は険しい登りが特徴の健脚向け、後者は稜線に出やすい南アルプス入門向けとなっています。

今回は青木鉱泉登山口からドンドコ沢ルートを登り鳳凰小屋に一泊。翌日に地蔵ヶ岳に登って鳳凰山の稜線を南に進み、薬師ヶ岳から東の中道ルートへ下りて青木鉱泉に戻る周回ルートにしました。

ドンドコ沢ルートは沢という名こそ付いていますが本格的な沢歩きのような場所はなく数度の軽い渡渉のみで、樹林帯歩きが中心となっています。

登山道沿いに滝が点在しており、中でも最後に現れる五色の滝は落差70mの迫力ある姿が見所で、本道から10分程下ると滝の真下に立つことが出来ます。登山口から4時間程登った場所にあるので寄り道するのも大変な所ですが是非一度見てほしい景色です。

小屋までは累積標高1,500m程の険しい道のりで、渡渉の度にアップダウンを繰り返す上に急登や足場の悪い場所もあるので登りで使うのがおすすめです。

道が分かりにくい部分が多く、特に砂防ダムから白糸の滝あたりは誤った分岐や踏み跡がいくつかあったので注意が必要です。土砂崩れなどで細かい地形が変わっているらしく迷いやすい箇所があるので、登山アプリで近い時期に登った方の軌跡を確認しておくと役に立つと思います。踏み跡を辿っている内に道を逸れる可能性があるので、周りを見つつ適宜軌跡を確認しながら進みました。

鳳凰小屋から山頂への道は足を取られる砂の登りで普通の山道より体力を使います。稜線に上がるとなだらかで道が広く歩きやすい部分がほとんどですが、地蔵ヶ岳と観音ヶ岳の間に一部岩場があります。花崗岩質でグリップは効きやすいですが浮石は多いので注意してください。

下りで歩いた中道ルートは長い樹林帯歩きで難所は特にありません。登山道としては単調で長い下り坂ではありますが、標高差約1,500mの中でダイナミックな植生の変化を楽しめます。ハイマツに覆われる稜線から苔むした針葉樹林や開放感のあるダケカンバ林を抜けて、ササの林床に覆われたカラマツ林へ移り変わる景色は、深い森の中に聳える南アルプスの魅力が詰まった道のりです。

全体を通してみると技術的難易度は高くないですが累積標高は2,000m超ということで十分な体力が必要です。コースタイムが13時間と長めであり、日帰りの場合は相当早く出ないと天気の変わりやすい昼〜午後に稜線を通過する事になってしまうので、余裕を持って歩きたい場合は小屋で一泊して午前中に歩くのがおすすめです。

登山記録

1日目

ドンドコ沢の樹林帯歩きと滝巡り

朝5時半の青木鉱泉登山口です。小屋の予約をした際にドンドコ沢は迷いやすいので気をつけてと言われたので、日の出を待ってから登り始めることにしました。鳳凰小屋までであれば明るくなってから歩き始めても昼頃には到着できます。

青木鉱泉の敷地内にはツリフネソウが咲き始めていました。紫が一般的なツリフネソウです。

白いものはツリフネソウの白花種でシロツリフネと呼ばれることもあるようです。

看板に従って登山道に入っていきます。暗いと少し分かりにくいかもしれません。

最初の方は車が通れそうな道幅の砂利道です。

川の脇をしばらく進みます。

どっしり前方に聳える堰堤の向こうに鳳凰山の山体が見えてきました。旅の始まりらしい雰囲気の景色で胸が躍ります。目の前のピークは鳳凰三山の一座である薬師ヶ岳です。

砂防ダムに沿って付けられた長い階段を登ります。山中に現れる巨大人工物というのはワクワクします。

最初の渡渉です。砂っぽい感じなので靴に入らないように石の上を渡っていきます。

しばらくは樹林帯歩きです。

急斜面のトラバースや宙に浮いた木の根を渡る場所があり、早くも一味違う山道の雰囲気が漂ってきました。

そして二つ目の渡渉です。

ここにはちょっとした滝があります。名前こそ付いていないみたいですが二段に渡って流れ落ちていていい感じ。早速持ってきた三脚を立てて撮影タイムです。

沢沿いにはキツリフネが咲いていました。ツリフネソウとは別種らしいです。今日だけで紫、白、黄の三色のツリフネソウを見ることができました。

この先は岩混じりの少し険しい道になります。

急斜面のロープ場を登ると脇に道が伸びていたので寄り道します。

道を逸れて高台に出ると南精進ヶ滝が見えてきました。落差30mの結構大きい滝なので遠くからでも見応えがあります。

岩壁を滑り落ちるような形の綺麗な滝です。

しばらくは岩場と渡渉の繰り返しです。

沢沿いにはヤマホタルブクロやオオバセンキュウが咲いていました。

樹林帯にはサラシナショウマが揺れています。登山口からここまでちらほら見受けられる花です。

鳳凰の滝分岐です。ここは登山道と書いてある方に進んでいきます。鳳凰の滝への道は迷いやすいらしいのでスルーします。登山記録や滝を紹介している方の記録などによれば往復40分以上かかるらしく、地図で見る以上に険しい道のようです。

ロープに沿って一旦下る道が登山道です。ここまで来ると下る道より登る道を選びたくなるもので、鳳凰の滝周辺で分岐を間違えて迷う人が多いみたいです。

登山道の脇には巨岩が姿を現し始めます。仙人が修行してそうな岩屋です。

今にも崩れ落ちそうな岩壁の上には大木が立ち並んでいました。

白糸の滝の分岐に来ました。道を逸れて見に行ってみます。

水の流れ落ちる音はすれども滝は木の陰に隠れていました。おそらくどこかから滝の脇に行くことができるはずですが道が見つけられなかったので諦めました。

麓から雲が湧いてきました。今日は午後から曇り予報なので晴れている内に小屋に着きたいところです。

森の中を進んでいきます。岩場や砂利、水場など変化があって飽きの来ない楽しい道のりです。

五色の滝でリフレッシュ

五色の滝分岐に来ました。広くなっているのでここで休憩している方が数人いました。

滝の轟音が響いてくる方に目を向ければ木の隙間から滝が見えます。

もう4時間以上歩いてヘトヘトではありますが気合を入れて滝の方に近づいていきます。滝への道には急な下りもあるので足を取られないように注意です。

滝の真下に来ました。カメラを縦にしないと画角に収まらないほどの大スケールです。

もう少し近寄った所で岩の上に三脚を立てて撮影します。滝に陽が当たって眩しいので偏光フィルターと暗くするフィルターを使っています。青々とした木々と流れ落ちる滝が青空に映えます。

少し放っておくと水滴がバシャバシャ飛んできて角型フィルターが水浸しになります。これはこれで涼しい雰囲気は伝わるかな。カメラに飛んでくる水飛沫をタオルと体で防ぎながら撮影しているので全身しっとりしてきました。

荒々しい岩壁と滑らかな滝の対比が良いですね。周りの岩肌にも小さな滝が流れていて豊富な水量を感じさせます。

滝壺にズームインしてみます。落差が大きすぎるようで滝が地面に直接ぶつからず、細かい水飛沫になって降り注いでいます。まるで黒部ダムの放水のようなダイナミックな景色です。これほどの規模の滝を登山道からちょっと歩いて間近で見られるというのが凄いです。

大岩の上に横たわって滝を見上げながらしばし休憩。太陽で暖められた岩の温度を背中で感じつつ、滝の音を聞き天然のミストを浴びてリラックス。最高に贅沢な時間です。

滝の周りをうろうろしていたら岩の陰に濃いピンク色の花を見つけました。最初はタカネビランジかなと思いましたが花が大きく萼の毛が目立たない点からオオビランジだと思われます。標高的にはどちらが生えていてもおかしくないので悩みます。

撮影と休憩で気づけば1時間近く滝の下に滞在していたのですが最後まで誰も来ませんでした。これほどの絶景を独り占め出来るとは僥倖でした。とはいえもっと色んな人に見て欲しい景色でもあるので、是非ここまで来たら寄ってみて欲しいです。

滝を眺めている内に疲労なんて吹っ飛んでしまって、足取り軽く先へ進んでいきます。五色の滝分岐から鳳凰小屋までは1時間ほど。ここまで4時間近く歩いていることを考えれば1時間はすぐそこです。

少し崩れ気味の道を登っていきます。下りに使うには不安な感じの道が多いです。

涸れた沢沿いの開けた場所に出ました。森の向こうに見えるのは地蔵ヶ岳のオベリスクです。登山口から数時間歩いてようやく山頂のお目見えとは、流石に山深い南アルプスです。

雲に包まれる岩塔はただならぬ雰囲気を醸し出しており、昔の人が神聖な場所として仰いでいたのも理解できます。

岩の隙間にキバナノコマノツメがひっそりと花をつけていました。

コバノコゴメグサも群生していました。夏登山ということもあり控えめな花が多めです。米粒ほどの花々が健気に咲く姿に癒されます。小米草(コゴメグサ)という名前もそんな事を考えながら付けたのかなと思いを巡らせます。

森の中に白砂と大岩が転がる風景はまるで枯山水の世界です。むしろ枯山水というのがこういう景色を模倣したのかもしれません。

白い涸れ沢を歩いていくと道は二股に分かれます。赤矢印の通り右へ進むのが正解です。

再び森の中に入れば小屋はすぐそこです。

綺麗な茶色い建物が見えてきたら鳳凰小屋に到着です。2024年に建て替えたらしく中も外もピカピカです。

五色の滝でのんびりしつつ時間調節したのもあってぴったり12時に小屋に着きましたが、先客はまだ数人ほど。中は二段の畳敷きになっていました。上段の窓際を確保してしばし休憩。

小屋の裏には水場があります。夏場のカラカラの時期でしたがジャブジャブと水が湧き出ていて水量は申し分なしです。名高い南アルプスの天然水なだけあって美味しい水でした。空いたボトルにいっぱい汲んでいきます。

小屋の外で森を眺めながら道中で挨拶した方と色々お話ししました。関西の方だったのでこの辺りの山についてたくさん教えてもらえて有難い限りでした。そんなこんなで外のベンチでゆっくりしていると少しずつ雲が湧いてきました。明日は稜線歩きなのでいい天気だと良いのですが。

仮眠を取ったり散歩したりしている内に夕食の時間になりました。鳳凰小屋名物のカレーライスです。こちらはなんとおかわり自由ということなので、ありがたく3杯しっかり頂きました。ルーに溶け込んだ肉と野菜の味が濃くて、大きく切られた人参とじゃがいもで食べ応えも十分。コーンが味と食感のアクセントになっていて何杯食べても飽きのこない味わいでした。

夕食後にお弁当をもらって一日目終了です。よく歩いてよく食べたのでぐっすり眠れました。

2日目に続く

公式サイト

鳳凰小屋

韮崎市観光協会


参考文献・Webサイト

深田久弥(1978)『日本百名山』新潮文庫

林弥栄 監修(2021)『山渓ハンディ図鑑1野に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社

畔上能力 編(2021)『山渓ハンディ図鑑2山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社