【関東】赤城山〜主峰黒檜山から地蔵岳・長七郎山へ紅葉周遊〜【10月】

赤城山について

赤城山の基本データ

所在地:群馬県

最高峰:1,828m(黒檜山)

選定:日本百名山・花の百名山・関東百名山

赤城山は群馬県の東部に位置する山で日本百名山の一座。赤城山と名の付いたピークは無く、山頂カルデラを取り囲むように並び立つ黒檜(くろび)山、駒ヶ岳、地蔵岳といった山々を総称して赤城山と呼びます。榛名山、妙義山と共に上毛三山の一角を成し、群馬県を代表する山として知られています。

平地を覆い隠すように聳え立つ外輪山を背景に大沼や小沼、覚満淵といったカルデラ湖が織りなす自然の箱庭のような空間が、四季折々にその姿を変えて風光明媚な風景を見せてくれます。湖の間を縫うように道路が通っており各地に駐車場が整備されているので車で名所を巡りながら観光することもできますが、今回は黒檜山から歩いて大沼、小沼、覚満淵を巡りながら赤城山の美しい風景の数々を楽しんできました。

大沼に鎮座する赤城神社と赤い橋

赤城山は群馬県内でも随一の存在感を持つ山であるため古来より信仰の対象となっており、前橋市内に鎮座する大洞赤城神社、三夜沢赤城神社、そして二宮赤城神社の三社を中心に、全国に赤城神社が建立されてきました。

地蔵岳から見下ろす大沼と赤城神社

その中でも大沼の畔に鎮座し赤城山登山者にも馴染み深い神社が大洞赤城神社です。当初地蔵岳に祀られていた社殿が大同年間に大沼南畔へ遷座して大洞赤城神社の社号となったと伝わっており、現在小鳥ヶ島に位置する社殿は1970年(昭和45年)に遷座したという比較的新しいものだそうです。大沼の只中に浮かぶ真っ赤な社殿と赤い橋は湖畔や山頂など山中の様々な場所から見る事ができ、赤城山を象徴する風景として親しまれています。

黒檜山・地蔵岳・長七郎山周回ルートについて

黒檜山・地蔵岳・長七郎山周回 / 白雀さんの地蔵岳・長七郎山・駒ヶ岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

赤城山の駐車場は大沼や小沼、覚満淵など各地に整備されているので好きな場所からスタートして多様なルートで登山が楽しめます。今回は赤城神社の北側にある黒檜山登山口駐車場からスタートして赤城山主峰の黒檜山に登り、尾根伝いに南に駒ヶ岳へ縦走したら更に足を延ばして篭山経由で覚満淵に下ります。

その後は少し変則的で、北に歩いて大沼南畔に向かい地蔵岳を北面から登ります。その後小沼の方に下りて長七郎山に寄ったら、大沼方面に戻り登山口に向かいます。覚満淵→小沼→地蔵岳の方がスムーズな時計回りの周回になるのですがあえて地蔵岳を北から登り小沼へと向かい長七郎山に登ります。

まとめると黒檜山~篭山周回→地蔵岳反時計回り周回→長七郎山~小沼周回時計回り周回の3ルートを合わせたような道のりになります。

この不規則なルート取りの理由は地蔵岳北面の取り付きからの登山道が非常に歩きにくいからです。黒檜山西面の登りは岩場のキツい登りで有名なのですが、この地蔵岳北面の登りは似たような岩場に粘土質の黒土が加わって非常に滑りやすくなっています。秋になるとそこに落ち葉が被り足場が更に不規則になります。これを下りで使うのは危険を伴うため、地蔵岳は北から登り小沼方面の安定した道を下りることにしました。

黒檜山西面と地蔵岳北面の岩場以外は普通の山道なので危険箇所はありません。黒檜山から南に連なる尾根の駒ヶ岳から篭山の範囲は往来が少ないようで人の気配が全く無かったので熊との遭遇に注意してください。また、篭山から駐車場に下りる道が不明瞭なので踏み跡と軌跡の確認をこまめに行うのがおすすめです。

登山記録

霧深い急登を越えて黒檜山へ

朝の赤城山登山者駐車場です。曇っていて一時は霧に包まれていたのですが、少しずつ明るくなってきたので登り始めます。天気が良くなればいいのですが。

車道を5分ほど歩いて登山口へ向かいます。紅葉終盤で落ち葉多めになっています。

こちらが黒檜山登山口です。入口から既に岩場が見えています。

黒檜山への登りは1時間ちょっとですが、印象としては8割ぐらいはこんな感じの岩場が続きます。

10分ほど登って見晴らしのいい場所に出ると大沼がよく見えました。まだ山のてっぺんに雲がかかっています。

所々に陽が差して幻想的な水辺の風景になっていました。ああいう湖畔のコテージでベンチに座りながらゆっくり朝食とか憧れます。そんな暇があったら山に登ってしまうのが自分の性分なのでなかなか縁がないのですが。

岩場の合間に挟まる緩い山道がオアシスのようです。疲れてきたなーという所でこういう道が現れてくれるので案外ペースメイクはしやすい登りです。

霧が濃くなってきて景色も何もなくなり無心で岩場を登っていきます。

岩場を登り切って稜線上に出ました。まずは北に進み黒檜山のピークを踏みます。

黒檜山山頂に着きました。日本百名山赤城山の山頂ということで、ここだけ登りに来ている方も多いみたいです。

絶景スポットの看板に従って、ピークから北に2分ほど進むと広く整地されたスペースに出ました。西の大沼から南の小沼まで見渡せて遠方には富士山まで見えるらしいです。今回はご覧の通り真っ白です。無念。

秋晴れの稜線を歩く

気を取り直して黒檜山の南へ進んでいきます。山頂標を通り過ぎた先にゴツゴツとした岩場があり、その上には鳥居と小祠が立っていました。鳥居の扁額には黒桧山大神と書かれています。黒檜山にはかつて高於神(水神である高龗神(たかおかみのかみ))が祀られていたらしく、現在は赤城神社に合祀されているようです。

現在の祠がそれと同じものを祀っているかは分かりませんが赤城山の主峰なだけあって年季の入っていそうな石碑や祠などが点在していました。

駒ヶ岳との鞍部に向かって下ります。

鞍部まで下りてきました。駒ヶ岳の辺りは山肌がササに覆われてモコモコしてます。稜線上は紅葉が終わって葉が落ち切った木がほとんどでした。

駒ヶ岳を登っているうちに太陽が出てきました。朝露がキラキラ輝いて爽やかな雰囲気。

駒ヶ岳の山頂に着きました。ガスに覆われて真っ白だった黒檜山の風景が嘘かのようです。

南東方面には関東平野が見渡せます。みどり市や桐生市、太田市方面です。市街地の中に浮かぶ緑の島のような山は八王子丘陵というそうです。あの辺りは桜の時期に巡ったことがありますが、これほど長く連なる低山があるとは気付きませんでした。

そしてもちろん西には大沼を見下ろす景色が広がっています。紅葉が終わり焙じ茶のような渋い色合いになった山というのも風情があります。

駒ヶ岳から篭山へ下っていきます。道中の分岐を下りれば西の駒ヶ岳登山口方面に向かうこともでき、黒檜山・駒ヶ岳周回コースとして二座を巡るのも人気があります。もう一度歩く機会があれば、ここから下りて地蔵岳、小沼を巡って最後に覚満淵を歩いたらスムーズなルート取りになりそうです。

落ち葉多めの下りで滑りやすい道が続きます。

見通しのいい疎な樹林帯という感じで、歩いていて爽快感があります。

篭山に近づくと手書きの地図が掲示されていました。地図通りに篭山へ向かいます。

軽い岩場を登ってピークに着きました。木の密度が濃いのでおそらく普段だったら展望が無いはずですが、葉が落ちているので大沼の方まで見通せました。低山でも展望が良くなるのは晩秋の山の良い所です。

鳥居峠の駐車場に着きました。覚満淵の南に位置しているので湖畔の散策に便利な駐車場です。

駐車場脇に覚満淵への入り口があります。

鹿よけの柵を通って湖畔へ向かいます。

覚満淵の草紅葉と、向こうに立つのは次の目的地である地蔵岳。山の上の方は紅葉も終盤でしたが草紅葉が見頃を迎えていました。

覚満淵の南側には木道が整備されているのでちらほら朝の散歩に来ている方がいました。

先程通った駒ヶ岳が水面に揺れています。

道路を歩いて地蔵岳の北面へ回り込みます。

大沼の南部には、かつて大洞赤城神社が鎮座していた場所が元宮跡地として整備されています。社叢の痕跡を思わせる巨木がいくつか立っていて神秘的な雰囲気です。

紅葉に誘われるように元宮の脇を通って登山口の方へ。

地蔵岳の急登の先に広がる展望の山頂

県道70号線の大洞駐車場そばに地蔵岳の入り口があります。少し分かりにくいですが道標と木に巻かれた登山道の番号が目印です。

見渡す限りのササ林の中を通って行きます。普通の山の斜面かなと思っていたのですが、意外と岩がちな道でした。

後半になると斜面が急になり、粘土と岩が混ざって滑りやすくなってきました。そこに落ち葉が混ざってくるので中々スリリングな道でした。個人的には黒檜山の急登よりこっちの方が気を張る分疲れました。

軽い笹藪を抜けて開けた場所に出たら小休止。見晴らしが良くなってくるので辺りを見渡してみます。

東に先程の覚満淵が見下ろせます。篭山に連なる稜線が赤城山の周囲に壁のように連なり右端の鳥居峠駐車場が外縁の関所のようになっているのが何となく見て取れます。

地蔵岳山頂に近づくにつれてゴロゴロと大きな岩が増えてきました。

ササ林は影を潜め、岩の隙間からはススキが顔を出しています。ススキの穂が朝陽を透かして輝く様に晩秋の落ち着いた美を感じます。

地蔵岳の山頂に着きました。平坦で広々としているので荷物を降ろして休憩している方がたくさんいました。

登ってきた道を振り返ってみると黒檜山と大沼がよく見えました。爽やかな秋空が広がりプカプカ浮かぶ綿雲が山肌に影を落とすのどかな雰囲気です。

赤城神社が最初に祀られた場所ということもあってか、古い石仏や石塔、水盤などが置かれていました。石仏群はいずれも首が無くて悲しげな雰囲気。かなり太い部分で折れた跡が残っているので廃仏毀釈の影響かと思われます。現在は釜蓋地蔵と呼ばれる地蔵尊が新しく安置されているらしいのですが見逃してしまいました。

山頂付近の土は鮮やかな赤い色をしており、地蔵岳の赤城山の中央火口丘としての一面を思い起こさせてくれます。南東方面には関東平野を一望する景色が広がっていました。

秋風に揺れるススキの向こうにレーダーや電波塔が立ち並ぶ様が印象的です。

山頂から南東の小沼へ下りていきます。

少し下りたところで道の脇に出ると小沼の展望地がありました。写真家には有名な場所らしく、三脚を立てて撮影している方がたくさんいました。

紅葉が終わりかけではありますが、これはこれで却って小沼の色鮮やかさが際立って悪くない景色かなと思います。小沼のちょうど向こうに立つピークは今回最後に登る予定の長七郎山です。赤城の山は見晴らしが良いピークが多く、次行く山がよく見えるので周回が楽しいです。

小沼への道は木道と階段で整備されていて非常に歩きやすかったです。地蔵岳だけに登る場合は小沼からピストンした方が登りやすそうです。

登りと比べて足元に余裕があるのでススキや紅葉の風景を楽しめました。

山道を抜けて道路を少し歩いたら小沼駐車場に着きました。駐車場の向かい側に小沼へ下りる道が整備されています。

緑に輝く小沼と岩場広がる長七郎山

小沼の畔に下りてきました。山上の湖なだけあって水がすごく綺麗で、見ての通り底の石まで見通せる透明度です。

紅葉を背景にエメラルドグリーンの湖が映える景色でした。

地蔵岳の方を見てみると湖面が青空の色を映してまた違った風景が楽しめました。

地蔵岳の上から見た渋い風景とは打って変わって、小沼の湖畔には紅葉と湖の鮮やかな景色が広がっています。一粒で二度美味しい秋の景色です。

湖畔の景色を楽しんだら小沼の外輪山を辿り長七郎山へ向かいます。

外輪山に入る手前のところに展望地があり大沼を見通せました。

この角度で見ると赤城神社の赤い橋が目立ちますね。神社の境内は山影に隠れて見えません。

小沼の外輪山は登山道が広く整備されていて遊歩道のような雰囲気です。

道中には東に聳える小地蔵岳への分岐があります。5分ほどで着くので少し寄り道していきました。

山頂には何かある訳でも無く、特に景観は無いのでスルーしても大丈夫です。

本道に戻ります。全体的に広くて明るい登山道といった印象です。

樹種が混在しているので個性豊かな樹皮を眺めるのが楽しい道のりでした。

長七郎山に着きました。山頂には見晴らしのいい岩場が広がっています。

ススキ原の向こうに広がる関東平野。長七郎山の斜面は特にススキの密度が高くて秋らしい雰囲気が一際濃かったです。

北西方面に聳える地蔵岳。木々の向こうに見上げる山というのも良いですね。こちらから見ると地蔵岳の台地状の山容が一目瞭然で、確かに電波塔を建てるのにはお誂え向きの場所だなと納得しました。

長七郎山の西面は賽の河原と呼ばれる広いガレ場になっています。

その名の通り斜面には石積みが多数立ち並んでいました。

石積みの傍には岩のアーチが建造されています。器用な人もいたものです。

森に入り外輪山の切れ目まで下りていきます。

小沼への分岐に来ました。車が通れそうな広い幅の道が左右に伸びています。

北へ向かい湖畔に出ます。この辺りの紅葉は黄色が鮮やかでした。

小沼の南畔から眺める景色は影が濃くてまた違った印象に。

砂浜のようだった北畔とは違って南側は岩場が広がっています。岩の一つ一つが大きいので結構歩きにくいです。散歩のつもりで一周したら大変そうな湖です。

景色を楽しみながら北畔に戻ってきました。

もう一度外輪山の入り口へ向かい覚満淵の分岐を下りていきます。

再び覚満淵に戻ってきました。最初は南側を歩いたので次は北側を歩いてみます。

この時間帯の地蔵岳方面は逆光になってしまうのですが、秋はススキや草紅葉が光って良い景色になってくれます。逆光好きには堪らない季節です。

小地蔵岳は登った時は影の薄い山でしたが、覚満淵から見ると円錐形で非常に美しい山です。

風が止んでくると小地蔵の端正な姿が水面に映って綺麗でした。一度目は風が強くて水面が細波だっていたので、もう一度来た甲斐がありました。

朝と同様に車道を歩いて大沼の南畔へ。

早朝に歩き始めたはずが気づけば時刻はもう午後3時頃です。あとはゆっくり観光しながら駐車場へ戻るとしましょう。

遅めの昼ごはんということで、写真右奥のドライブイン名月館さんでおっきりこみとワカサギフライを頂きました。

おっきりこみは群馬の郷土料理で、幅広のうどんを野菜や肉など具沢山の汁で煮込んだもの。山梨のほうとうに似ていますが、あちらはかぼちゃを入れて味噌でとろっと煮込むのに対して、おっきりこみはかぼちゃが無くて味噌以外の味付けもあるのが大きな違いでしょうか。醤油、味噌、カレーなど選べたのですが今回はオーソドックスな醤油にしました。野菜だけでなく揚げ餅や油揚げなど具材がたくさん入っていて食べ応えがあり、登山後の体が温まりました。

ワカサギフライは一般的なフライと比べて衣の薄いフリッターのような揚げ方で素材の味が際立つ一皿でした。時刻はもう15時を回っていて昼食としては大分中途半端な時間に来てしまったのですが温かく迎えて頂き身も心も癒されました。

最後に大洞赤城神社にお参りしていきます。

トレードマークの赤い橋は当時改修中で立ち入り禁止になっていたので北から駐車場の方に回り込んで境内へ。

拝殿越しに眺める黒檜山が夕方の太陽に照らされて旅の終わりを見送ってくれているようです。

大沼の畔に立つ灯籠と鮮やかな紅葉を眺めながら帰路に着きました。

公式サイト

県立赤城公園-群馬県ホームページ(自然環境課)


参考文献・Webサイト

黒保根村誌編纂室 編『黒保根村誌』本編 1,黒保根村誌刊行委員会,1997.3.

深田久弥(1978)『日本百名山』新潮文庫