【東北】南蔵王縦走〜刈田峠から花咲く湿原と静かな稜線へ〜【8月】

屏風岳アイキャッチ

南蔵王について

南蔵王の基本データ

所在地:宮城県・山形県

山系:奥羽山脈

標高:1,817m(屏風岳)

芝草平
芝草平

宮城県と山形県の県境に聳える蔵王連峰において、刈田峠の南に連なる山々は南蔵王と呼ばれます。宮城県最高峰である屏風岳(1817m)をはじめとして杉ヶ峰、南屏風岳、不忘山といったピークが連なり、道中には芝草平と呼ばれる広大な湿原が広がっています。刈田岳やお釜をはじめとした北蔵王の荒涼とした景色と比べると、湿原や樹林帯が連なる緑豊かな登山道が南蔵王の魅力です。

南蔵王縦走路について

前山・杉ヶ峰・屏風岳・南屏風岳 / 白雀さんの南屏風岳前山屏風岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

南蔵王のメジャーな登山口は北の刈田峠に位置する南蔵王登山口と南麓の白石スキー場登山口です。今回は屏風岳の北に位置する芝草平を歩きたかったので刈田峠から南屏風岳までの南蔵王縦走路をピストンで歩きました。

屛風岳までの登山道に難所は無く初心者の方でも歩きやすいコースです。前山や杉ヶ峰の手前には軽い岩場があるので運動に適した靴は必要です。

屛風岳から南屛風岳への道

不忘山まで行こうかとも思ったのですが、夏も終わりの時期なので草が成長して屏風岳以降の道は深い薮になっていたため南屏風岳までにしておきました。薮に入って南屏風岳まで行く場合は全身びしょ濡れになるので雨具の上下とゲイターがあると快適です。夏場は自然乾燥でも良いのですが今回は曇っていたのでなかなか乾かず途中で着替える羽目になりました。

屏風岳までは道幅が広く刈り払いもされていたので藪漕ぎを避けるのであれば南屏風岳までいかずに屏風岳で引き返すのも選択肢の一つです。

登山記録

刈田峠から霧に煙る南蔵王を歩く

刈田峠駐車場

朝の南蔵王登山口駐車場です。刈田峠は霧に包まれていて不穏な感じ。とはいえ天気予報では少なくとも大崩れはないみたいなので登山決行です。

南蔵王縦走路への道

道路を歩いて登山口へと向かいます。

エゾオヤマリンドウ
エゾオヤマリンドウ

早速道の脇にはエゾオヤマリンドウが咲いています。駐車場時点で標高1580mの高山地帯から歩き始めることができるので、最初から高山植物が楽しめます。

南蔵王縦走路入口

登山口に着きました。木に文字が彫り込んである手の込んだ看板が目印です。

登山口近く

登山道の中に入っていくと視界は真っ白。いかにも熊が出そうな見通しの悪い雰囲気なので鈴でアピールしながらゆっくり進みます。

アキノキリンソウ
アキノキリンソウ
ゴマナ
ゴマナ

足元にはアキノキリンソウやゴマナが咲き競います。キク科の花が群生していると登山道が一気に華やかになります。

イワショウブの実

登山道脇の小さな湿原にイワショウブが実をつけていました。熟すともっとしっかり赤くなります。芝草平にはたくさん群生しているそうですが花はまだ残っているかな。

木道から眺める南蔵王

木道越しにはこれから向かう前山と杉ヶ峰が見えます。雲にけぶる山々というのも風情がありますね。

シロバナトウウチソウ
シロバナトウウチソウ

垂れ下がるように咲く白くて長い花はシロバナトウウチソウ。ワレモコウの仲間で東北地方の山に分布しています。

刈田峠避難小屋
小屋中

木道を抜けた先には刈田峠避難小屋が建っています。峠からかなり近いので無雪期は縦走でもしない限り使う機会は無さそうですが、蔵王エコーラインが閉鎖される冬期は貴重な拠点になっているみたいです。中を覗くと畳敷きで整頓されていました。

前山オオシラビソ林

前山の手前には広大なオオシラビソ林が広がっていますが、立ち枯れて真っ白になった木の方が目立ちます。蔵王の樹氷は2010年代ごろに虫害が深刻な問題となっていましたがこれほど広範囲に枯れるというのは驚きです。中央蔵王の辺りでは植樹を行っているようですが南蔵王の方はどうなっていくのか気になるところ。

前山岩場

オオシラビソ林を過ぎた前山の中腹に軽い岩場があります。

前山から刈田岳

岩場の上に立って北を振り返ると刈田岳を一望できます。ロープウェイや道路が通っていて気軽に登れてしまう山ですが、こうして少し離れてみると蔵王の雄大さが感じられます。

前山手前岩場
前山手前
前山山頂

岩場を越えて開けた尾根沿いに進み前山のピークに着きました。ここは特に展望は無いのでそのまま進んでいきます。

杉ヶ峰手前

森を抜けて杉ヶ峰のピークが見えてきました。

ヤマハハコ
ヤマハハコ
ウメバチソウ
ウメバチソウ

この辺りにはヤマハハコやウメバチソウといった樹林帯らしい花が咲いています。

ミネウスユキソウ
ミネウスユキソウ

ミネウスユキソウはピークを過ぎてほとんどが日焼けして茶色くなっていましたが幸運にも咲いたばかりの花を見つけることができました。真っ白な葉が朝露に濡れて輝く様は雪のように可憐な印象です。

杉ヶ峰岩場

最後に岩場を越えていきます。道の脇に茶色くなったミネウスユキソウが群生しているのが見えます。ほとんどがこんな感じで見頃を終えていました。

杉ヶ峰山頂

杉ヶ峰の山頂に到着すると出来立てホヤホヤの山頂標が迎えてくれました。周囲の土は重機で固めたのかと思うほど綺麗に整地されており、団体登山も余裕で迎えられるキャパシティがあります。熊野岳の周りでは学校登山に出くわしたことがありますが南蔵王の方も歩いたりするんでしょうか。

芝草平の大湿原を抜けて屏風岳へ

杉ヶ峰から芝草平

杉ヶ峰の南東方面、屏風岳との鞍部に広がっているのが広大な湿原である芝草平です。登山道は湿原の北の端を通っています。

湿原の畔

少し下って湿原の畔に来ました。こちらは芝草平の手前に位置するちょっと小さい湿原です。地図で見ると鞍部より一段高まった場所ですがここも芝草平に含まれるのでしょうか。現在の地図だと繋がっていませんが1974年の衛生写真ではひと繋がりの大きな湿原だったように見えます。

芝草平手前

少し進むと芝草平の核心部が見えてきました。

キンコウカ
キンコウカ
イワイチョウ
イワイチョウ

キンコウカやイワイチョウなどが目立ち始め、植生も湿原らしくなってきました。

イワショウブ
イワショウブ

登山口近くで見つけたイワショウブですが、こちらでは花を咲かせているのを見つけました。満開だと真っ白な花ですが花が終わり実を付けると赤く色づいていきます。一株の中で赤白のグラデーションが見られるのが綺麗です。

シロバナトウウチソウ
赤いシロバナトウウチソウ

これは花糸が白いのでシロバナトウウチソウの赤い個体でしょうか。シロバナトウウチソウが種名なのでなんだかややこしいですね。

芝草平標識
芝草平木道

芝草平に着きました。木道は2024年に改修されたばかりのもの。植生保護のために頑丈な高床式になっています。

芝草平

登山道から離れて休憩デッキの方に向かいます。木道の向こうにも広大な湿原が広がっているのが見えます。昔は木道が無く自由に歩けたらしいですが植生保護のため進入禁止となっています。高層湿原の形成にかかる途方もない時間を考えれば妥当な措置です。

休憩デッキ

湿原を眺めながらベンチでちょっと休憩。

芝草平池塘

草原を優しく染める黄色いキンコウカと大小の池塘群。派手さはないですがホッとする風景です。

ミヤマホタルイ

池塘ではミヤマホタルイが穂を出していました。ホタルが住むような場所に生えるというのがホタルイの由来らしいですが、こうして穂を出し風に揺れているとホタルが群れているようにも見えてきます。

芝草平から登り

湿原を抜けたら屏風岳までしばしの登り坂。石畳になっているので歩きやすいです。

ミヤマセンキュウ
ミヤマセンキュウ

林床にひっそりと咲くミヤマセンキュウ。セリの花は上から見ると雪の結晶みたいで綺麗です。

屏風岳山頂

屏風岳の山頂に着きました。杉ヶ峰と同様に山頂部は広く整地されています。山頂標更新の際に合わせて整備したんでしょうか。

屏風岳から東方面
東方面の展望

東に開けていて麓の蔵王町から仙台湾まで一望できます。宮城平野を見渡していると宮城県最高峰に来たんだなと実感できて清々しい気分です。

藪道の先に聳える南屛風岳

屛風岳から南屏風岳へ

南屏風岳への道は藪の中です。道自体は明瞭なので迷うことはないはず。たびたび熊の目撃情報がある場所なので鈴で音を立てながら歩きます。

藪往路

ササだけではなくてシャクナゲなどの木の枝も飛び出して来ているのが厄介です。腕でしっかり顔をガードしながら進みます。

南屛風岳山容

ずっと藪の中というわけではなく、開けた場所に出ると南蔵王の稜線を見渡せます。

フボウトウヒレン
フボウトウヒレン

この辺りに生えるトウヒレンは「フボウトウヒレン」というらしく、南蔵王の他には磐梯吾妻、船形山に分布しています。淡い色合いにくるっと巻いた総苞片が可愛い花です。

藪とリンドウ

藪の中は競争が激しいからかリンドウも頑張って茎を長く伸ばして草むらから顔を出しています。湿原でのんびり揺れている花と同じものとは思えない野生的な佇まいです。

南屏風岳山頂

南屏風岳まで来ました。薮をかき分け辿り着き全身ずぶ濡れ。レインパンツを忘れたので足がびしょびしょになってしまいました。

南屏風岳から北の展望

来た道を振り返ってみると広大な芝草平とその向こうにどっしり聳え立つ刈田岳がいい景色です。

南屛風岳復路

不忘山まで行くか悩みましたが南屏風岳で引き返すことにしました。不忘山には今度白石の方から登ってみることにします。

藪復路

帰り道も薮です。同じところを通るので当たり前ですが。道の先が分かっているだけ気が楽です。

芝草平復路見下ろし

屏風岳を越えて芝草平へ下りていきます。

芝草平帰り

芝草平のベンチでもう一度休憩。これから登るという方がどこまで進むか悩んでいると言っていたので屏風岳より先は薮でびしょ濡れになりますよと教えました。薮こぎも嫌いではないのですが心構えがあるとないとでは辛さが結構違います。準備も必要ですし。

杉ヶ峰復路
杉ヶ峰帰り

登り返して杉ヶ峰へ。雲の具合は目まぐるしく移り変わって青空が出たり隠れたりの繰り返しです。とはいえ太陽はずっと雲の中なので歩いている分には暑すぎずちょうどいい気候でした。

杉ヶ峰から中央蔵王

杉ヶ峰のあたりからは刈田岳の向こうに聳える茶色い山肌の熊野岳まで見えます。

ミヤマクワガタ
ミヤマクワガタ正面

登山道の真ん中にメスのミヤマクワガタが佇んでいました。赤茶けた色合いがアンティークオークみたいで渋いです。一通り撮影した後は踏まれないように脇の草むらへ避けてもらいました。

前山帰り

前山まで来ました。ここまで来たら後は登山口まで下るだけです。

前山から刈田岳

刈田岳を見ながら峠まで戻っていきます。荒涼としたイメージの刈田岳でしたが南蔵王から見ると広大な樹林帯に覆われていてかなり印象が違います。

前山から帰り道
登山口帰り

木道を抜けて登山口へ戻って来ました。

南蔵王展望

道路を歩いて駐車場に戻りながら南蔵王の稜線を眺めます。朝はガスに覆われていたので最後に全体を見渡せて良かったです。

あとがき

蔵王連峰は登山を始めるきっかけにもなった思い入れのある山なのですが南蔵王には今回初めて訪れました。曇り空という事もあって人が少なく、霧に包まれる南蔵王の幻想的な景観の中でゆっくりと山歩きを楽しむことができました。北蔵王の火山然とした景色とは違った魅力が南蔵王にはあるので、中央蔵王に登ったことがあるという方も是非一度訪れて頂き蔵王のまた違った一面を感じて欲しいです。

公式サイト

ライブカメラ・エコーライン交通情報 蔵王町ホームページ


参考文献・Webサイト

畔上能力 編(2021)『山渓ハンディ図鑑2山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社

清水建美 編(2021)『山渓ハンディ図鑑8高山に咲く花増補改訂新版』門田裕一改訂版監修,山と渓谷社